人肉鍋
ただのみきや

焼焦げた詩に辺りが拒まれる朝

幾つもの数字を突き立てられ
中東事情から抜粋された
金の卵を産むカラクリを
羽の生えた大らかさで
目ざとく 錯覚する

机上の空論も
過剰な言論も
レモンを絞って

「父さん
ゲームも本当の戦争だと思わなくちゃ
勝てないんだよ」

「そうだね
戦争もただのゲームだと思えば
良心は痛まないね
父さんは無人戦闘機で
テロリストたちを殲滅するよ
我が国内事情と利権の為に
大いなる正義の旗を振って」

「僕はもう行くよ
こんなつまらないゲームじゃ
死んでいるようなものだから
聖戦の名のもとには何だってやれる
そんな人たちと一緒に一人でも多く
父さんたちを殺すつもりさ」

「自爆もするのかい」

「カッコいいシチュエーションがあればね」

意識の水面を滑るアメンボ
精妙に配合された媚薬表現
一滴のインクが溶けるように

やがて無尽の情報流砂から
喃語じみた片言
ひと粒ふた粒 拾って握りしめ

僕らは生け花のように殺されていた
互いの瞳に真昼の新月を仰ぐ
孤独な地球の未熟児だった

死の使いの鎌がゆっくりと振るわれるとき
瞑るな 真正面に立って目を見張れ
それは「鎌」ではなく「おたま」
掬われろ
この肉鍋から
救われろ
いつかもう一度子孫たちが
聖なる家族の食卓を囲む日まで
亡者になっても啜るものか



    《人肉鍋:2014年10月26日》






自由詩 人肉鍋 Copyright ただのみきや 2014-11-09 22:15:40
notebook Home 戻る