妖精のいたずら(だーれも知らないシリーズ5)
森川美咲

だーれも知らない森の奥
いたずら好きでさびしがり屋の
妖精が暮らしてる
風と戯れ
光と舞い
花と笑い
誰かが来るのを待っている


だーれも知らない森の奥だけど
迷いこむ人間がたまにいる
今日はほら
家族とはぐれた兄弟が

泣きじゃくる弟を
励ましながら進む兄
本当はぼくだってこわいよう
だけどお兄ちゃんだから
ぼくがしっかりしなくっちゃ

そんな二人の目の前に突如
一陣の風と
一筋の光
そして
花が降る

うわあきれい
君はだれ?
透き通る羽に手を伸ばし
追いかけ走り出す二人は
もう笑顔

いたずら好きな妖精が
キラキラと笑いながら
森の奥へ誘(いざな)う

風と走り
光を纏い
花になり
遊び疲れて眠るまで

おみやげは
不思議な夢の記憶と
柔らかい髪に引っ掛かった花びら


だーれも知らない森の奥だけど
入ってくる人間はわりといる
今日はほら
偉ーい森の研究家

森のことなら何でも知ってる
道に迷ったわけじゃない
この木はブナ、ナラ、そしてカシ
おやおやこの足跡は…

そんな男の目の前に突如
一陣の風と
一筋の光
そして
花が降る

ふむふむ、この花は
なるほど珍しい
透き通る羽は彼の視線を
そのまま透き通す

偉ーい森の研究家の
知らないものは
森にはいない
いるわけがない
馬鹿にするな

風が吹き
光が射して
花が散った
ただそれだけ

森をよく知らないくせに入り込んで
迷うやつは馬鹿だ
しかし俺は違う
馬鹿にするな


そもそもなぜ森を好きになったのか
幼い夢の記憶はいずこ
さびしがり屋の妖精が
拗ねて魔法をかけた
しばらく迷っていきなさい

歩き疲れて眠ったら
思い出してくれるかな
そしたら一緒に
楽しく遊ぼう
弟さんは、元気?


自由詩 妖精のいたずら(だーれも知らないシリーズ5) Copyright 森川美咲 2014-11-09 06:04:06
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