悲しい動物
やまうちあつし

庭の手入れをしていると
どこからかぶらりと
見慣れない動物がやってきた
とても悲しい目をして
物置や車のあたりをうろついている
保健所に電話するか警察に知らせるか
本来ならばするところだが
あんまり悲しい目をしているので
庭に生えている植物の葉をむしり
口元に差し出す
この植物はうちの家内が
どこからか仕入れて庭に植えたもので
忘却作用があるという
悲しい目をした動物は
ゆっくり顎を動かして
ひとしきり反芻していたが
やがてくるりと向きを変え
我が家の庭から立ち去った
ちらとしか見えなかったがその時も
悲しい目をしていたような気がした
私は庭の手入れを続ける
そしてふと思いつき
先ほど与えた植物の葉を
そっと口に含む


自由詩 悲しい動物 Copyright やまうちあつし 2014-11-04 14:35:40
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