さよなら、人魚
汐見ハル
ラインストーンふた粒はがれた日のようにさよならって言ったほうが勝ちなの
彼氏くらいいるんでしょってモノグラムの財布撫ぜてるひとに問われる
ゆめのなかほんとうの家族に愛されるゆめを横切るへびをみました
泣く窓に背を向けて春爪先回転こもれびのごとピアノけちらす
ティーカップの底で音なく崩れてく角砂糖だってくるしんだはず
わたしのこと女だってわかってるのと雪の匂いのゆびを詰った
「ずっとまえ人魚だったの」「ふうん、そう」西陽をうつすまるい爪たち
きゅうとなくこいぬみたいってわらうんだふたりぼっちのむねのなかみを