千鳥しば鳴く
藤原絵理子


月のない夜 銀河からの光に
山の端の木枝は 浮かび上がる 黒々と
花は眠っている 午後の明るい顔のままで
川音は 青くさざめいて 流れる


あてにはならない 行く末へ
いくつもの悔恨が 囁きかける それでも
暗闇の彼方に瞬く 幽かな橙色の光は
まだ燃え尽きていない 命が揺らめく


漆黒の闇は 美しい髪に溶けて
木霊は 愛しい人の唇から漏れた 言葉の
心地よいところだけ 繰り返している


魂は 夜鳴く鳥に宿り ひととき華やかに
枯れた欲望は 古びた墓石に 苔を育てる
障子の向こうから 幼子の遊ぶ声


自由詩 千鳥しば鳴く Copyright 藤原絵理子 2014-10-28 21:56:07
notebook Home 戻る  過去 未来