箱庭詩集
嘉野千尋
校庭の桜並木花吹雪に見惚れる君に見惚れる僕
若葉萌えて黒髪の乙女自転車ノーブレーキ危機一髪
君が読んでた本の栞場所を変えた犯人僕ですごめんなさい
雨の日の窓辺の曇りガラス書付け残した六月の終わり
「さいん・こさいん・たんじぇんと」白墨の魔法陣描く数学教師
「グッダフタヌーン」呪文を唱える午後の授業帰り道に虹出現
窓辺から見詰めるだけの恋物語あぁ今日もまた今日もまた
歌声響く音楽室振り仰いで探すひこうき雲遠く
思い出を集めて歩く放課後の旅取り残された影一つ
山茶花の花が揺れたあの窓辺見惚れていたのは誰の横顔
ぜんぶ思い出にするなんて無理なんだ別れの言葉は言わないで
さよならを言う練習何度もしました「さようなら大好きでした」
アルバムの片隅で知らない横顔見せる君にまた見惚れて
紙吹雪花吹雪隠してください僕の姿ただ今だけは
箱庭の物語の最後の言葉は「さようなら」ではありません
「あなたが」「あなたを」「きみが」「きみを」言葉にはならないね最
後の最後に