空の向こうに
ハァモニィベル

蒼い空が 遠くて
余計に悲しいのは
僕が
1羽のウサギだから

カメに負けたあと
どうなったのか誰も
知ろうとはしない
色褪せたウサギ

透明な過去の中に
遺失されたまま
埋ずもれ消えていく
小さなウサギ 

世界一白い
砂の丘に
やがて
雨が、
大きな水溜りになって
たくさんの
エメラルドに輝く
あの
レンソイス・マラニャンセスの
白いシーツの
砂浜に
エメラルドの雨になって
降り注ぎ
やがて消えてゆく
碧い湖

あの碧い湖になって
僕は
眠りたい



あれから
ウサギは
村で
笑われる
日々を過ごした
一人ぼっちで

そこにある時
オオカミがやって来る
村を襲わぬかわり
子ウサギを3羽
差し出せと
明日の朝までに考えろと

紛糾する村の会議に
案はなかった
沈黙の中、
「僕が行く」
負けたウサギが言った
オオカミの待つ丘へは
僕一人で行くと

翌朝、
丘の上
あらわれたウサギに
オオカミが言った
あと2匹はどうしたのかと
「君を恐れて、隠れている
「ちょっとだけ
「後ろを向いててくれないか」
そう言って、オオカミがみせた一瞬の背中に
ウサギは全力で突進し
オオカミと一緒に谷底に墜ちた。



空の向こうに落ちたかもしれない
一羽の白い命の物語
それは
掌にそっと消えていく
掬い上げた時だけの
確かなエメラルドの輝き











自由詩 空の向こうに Copyright ハァモニィベル 2014-10-25 22:15:02
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