前日のソーダ
Monk



冷蔵庫が嫌いな人になる
それが唯一の特徴になる

ぶつ切りのチーズ
ぶつ切りのフィルム
どちらも最後には朽ち果てるので

本当なら何もない部屋がよかった
断面図はシンプルなのがよかった



書いた手紙が全て届かないのであれば
惜しみなく便箋は消費される
たまに名前を呼ばれることがあっても
一度は聞き逃す癖が直らない

床の上を転がってゆく
どこまでもぶつからなければよかった
しまっておく場所を考えておけばよかった



ひとりで暮らしてゆける方法に飽きている
この部屋を発端に様々なことに飽きている
生ぬるいスパゲッティのような生活
それでもバケツの水程度の新鮮さ

冷蔵庫は必要ないんだと
一日に何度か声にする
ぶつ切りのチーズ
ぶつ切りのフィルム
もっと細かくきざむ道具がほしい

同じことばかりしているのに
僕の生活はいまだ朽ち果てない
今日もハロー
明日もハロー

冷蔵庫の電源は抜かれている
前日のソーダはテーブルに置かれたままで
どちらも同じ運命をたどる準備をしている



自由詩 前日のソーダ Copyright Monk 2003-11-06 22:35:21
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