ぼくたちは静かに遊んでいた
オイタル

山峡から雲がほどかれて
青空の薄い隙間に流れ込んだ

寺の境内のジャングルジムの上を
白球は大きく弧を描いて巡り
泥田の中に澄んだ影を潜ませ
その影の中にぼくらは遊んだ
風は風のように木と枝を揺らす

境内の隅の錆びたブランコから
ぼくらの知らない友達が幾人か
青空の淵へと行方をくらました
ぼくらの知らない探偵が幾人か
足跡を探しに青空を渡って戻らない

山峡から雲は幾重にもほどかれて
数限りなく空の隙間に見失われる

入り口の側のシーソーの上で
Tシャツの王国が生まれては消えた
仕切りのせまい王城で繰り返される
確信のない裏切りと悪意のない妥協
猫は猫のように陽だまりに眠る

東の林の草薮に半ば隠れる鉄棒に
顔のない子ども達が長く列をつくる
夕暮れて幾人かさびしく列をつくる
ひとしきり鉄棒を撫でては入れ替わり
ひとしきり鉄棒を撫でては入れ替わり

山峡から雲はほどかれて谷を下り
幾筋か私たちの村へともれ落ちる


自由詩 ぼくたちは静かに遊んでいた Copyright オイタル 2014-10-12 00:34:06
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