二〇一四年ノーベル賞を肴に雑感
もっぷ

 『遺言においてノーベルは、「私のすべての換金可能な財は、次の方法で処理されなくてはならない。私の遺言執行者が安全な有価証券に投資し継続される基金を設立し、その毎年の利子について、前年に人類のために最大たる貢献をした人々に分配されるものとする」と残している』(ウィキより抜粋)

 考えてしまう。今年の平和賞受賞の一人であるあの少女はわたしにはどうしてもノーベル賞の権威の宣伝に利用されたとしか思えない、結果論であったとしても。ノーベルの気持ちを汲むならばあの少女へはノーベル賞は賞の名を出さずつまり今年は受賞者の一人の名は公表しないという選択をして完全に地下にもぐって彼女の身の安全の確保や今後への投資、未来へ拓ける機会の賢明な提供の継続を行ってその上で時期をみてからの発表。絶対にそうするべきだった。彼女に本当に必要なのは急ぎの公けな名誉でもないしそれを受けたという自覚でもない。動かしがたい事実として力のあるかつ平和と真摯に向き合うことのできる大人たちからの命と未来の保護・保証と可能性の限りなく圧倒的な現実こそのはず。賞の名前と賞金という名の衆人環視可能な一時金には彼女の今後にさらなる脅威を呼ぶ危険性だって否定できない。賞をあげたことは良いにしても、とても良いことだとしても何故あしながおじさんになれなかったか。

 文学賞の発表時期・瞬間に関してならばわたしは完全に野次馬と化している、何故なら村上春樹が絡んでいるから。率直に言って彼が受賞したならばわたしは今後ノーベル文学賞をまったく信頼しなくなるだろう、あるいはこの広い地球上の文学界にそんなにも人材がいないのかと憂えるだけだ。彼の小説は例のクロニクルまではすべて読んでいる、つまりそこまでだともいえるわけだがこれはすごいと瞠目しながらかつてハードボイルドワンダーランドを読み進めてゆき最後の本当に最後の一ページまでの驚くべき世界との邂逅がその一ページのなかのたった一つのてにをはによって完全に駄作と断定せざるを得なくなってしまった経験を持っていながらもクロニクルを読むその以前まではまだかっぱえびせんであり得ることができるだけの魅力は確かに維持することができていた。もちろんたとえるなら芥川賞的ではなく直木賞的な位置づけの彼ではあったししかしながらそのことが一小説家としてもしくはその手による文学としてどこかしらに遜色があるなどという料簡は持ってはいない自負もある(白状すれば村上春樹を直木賞組と分類してここに記す恐怖と闘ってはいる)。クロニクルは単行本の最後の第三巻が出るなり即日三冊を纏めて入手し0泊2日で読み切った、そして読みながら件のモンゴル人の皮のくだりにて耐えがたい描写にも耐えさせられた挙句にここにクロニクル論を展開する意思はないからそのことがたとえこの文章の責任を取っていないなどと言われるのなら言うがよろしと思いながら結論するがあれはいったい書くということの一人の赤の他人の性格的傾向からくる彼のなかだけで完結してしまう快感・満足以外にいったい何を見いだせるのか読み手として支払った立派な単行本三冊分に見合うものを得ることができたのかという恨み節的趣向のブーイングを正々堂々とできるほかには何すらもないからっぽな時間を人生のなかでつくられてしまったわたしは被害者であるとちいさな声で言う、村上春樹教祖に忠実なる信者たる無限の大勢の怖さを知っているから。ノーベル文学賞の来年にも再来年にもその発表時期が来たならまた取れなかったというツイートがきっと続出するのは経験済みで(あるわけはないが)風物詩ですらありせっかくだから参加しているなかでもっとも賑やかなるSNS、ツイッター越しにYouTubeの中継を観賞しながらまこと風物詩となってゆく過程を愉しむハブ・ア・ブレイク、ハブ・ア・キットカットよ永遠に。

 最後に青色発光ダイオード。素晴らしいと思う。ところでもう実行がたとえ一部であれなされているのかは知らないが貧しい国・地域の灯りを白熱球から蛍光灯にそしていまならLED式にでもかまわない、そうするべく一般的に豊かだと言われている西洋諸国もちろん日本も含みそういう意味でわれわれが一致団結してその寄付行為を行ったなら地球温暖化の問題が相当解決に向かうということを期待しているのだけど裏づける知識を持ち合わせていないことをノーベル賞発表を機に思いだしわたしには地球人として本来当然に必要な行動力が欠如している現実があるという弁明の余地のない罪をおかしていてなおかつ確信犯ですらあるのかと秋深まりゆく時節に立ち趣味でもない自己嫌悪そしてそれに対しての言い訳をやっぱりしたいという見苦しさとさえまた出会いなおして机上論のままなのである、愛しのジャン、かなしみの空腹、無垢なる食卓それは永遠の憧憬、もうもどれない白熱球のぬくもりの許で。ニコラ・テスラ。



散文(批評随筆小説等) 二〇一四年ノーベル賞を肴に雑感 Copyright もっぷ 2014-10-11 15:27:37
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