十三月の童話
もっぷ

岩を打ち砕かんばかりの波の午後
魚たちは眠れないで蒼い夢を食べている
知っているのは砂浜に飾られている白い貝殻だけ
いや、君とわたしもそこに居る

聴こえてくる無限螺旋の慟哭が誘う
二人の想いに重なる涯てへの憧れがみあげる
十七回目の空にとっての唯一の未知それは
永遠が埋葬されている砦へゆくための
地図の在り処をさがす術
わたしたちのだって偽りのなみだではないのに

かつての初夏に君とシャベルで苦労した
二人分の棺となるべき地球の穴は
あまりにこの星が携え過ぎていたので
早々に穴の意志によって塞がれてしまった

ついに岩が粉微塵となった夜
思惟のための灯台が現れる
無人のそれ
しかし灯りは底なしの聡明さをみせる
北から来た君が冬の手前の十月の椅子から
どうしても立ち去りたくないと言う
ふるさとはどうするの
無人の灯りの塔がたずねる

(少しの幕間に何かが仕掛けられる)

岩を打ち砕かんばかりの波の午後
魚たちは眠れないで煩悩の音を聴いている
知っているのは君とわたしと灯台と
いや、白い貝殻もそこに居る

いつかここは十三月
明るい空から何かが落ちてくる、惜しみなく
一つを君、一つをわたしが掴み取り
永遠の墓標を見い出す
同時にただしさ、の崩壊そして
磁気コンパスは不要な世界の幕が上がる
白い貝殻たちが七色を纏った
緞帳芝居だと見破っても
瑠璃色の星は躊躇わずに承認の判を押す



自由詩 十三月の童話 Copyright もっぷ 2014-10-07 01:48:03
notebook Home 戻る