人生
イナエ

ブリキの機関車が横向きに倒れ
プラスチックのミニカーが仰向きになっている
河原で拾った平たい石と
足の折れた甲虫の死骸の上で
スカートのまくれた人形と
鼻のかけた木偶が抱き合っている
形も色もごちゃ混ぜに
放り込まれたおもちゃ箱
それら全てが私の足跡

細胞が日々更新されているとしても
腕に走るケロイド 
胸に穿ったドナーのあと
これら傷あとの全てが
過去の記録であるように

物置きの奥深く
しまい込まれた野球のバット
押入の棚の奥の闇に潜めた通知表
額に入ったセピア色の賞状
これら全てが私の過去であるように

一冊の本に並んだ詩編の数々
これらを詠んだ時も場所も
テーマも事象も異なっていようとも
全ての言葉が一筋の時間に繋がれて
私の中にまとめられている

パソコンに保存された言葉の断片
いつか形を整え詩歌になるか
子供らは言う
「もしものときに如何するか
 連絡先などメモでも作ってね」
ああこれらまとまりのない未来
私の人生にはまだ組み込まれていない


自由詩 人生 Copyright イナエ 2014-10-06 18:27:38
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