春は待てないもう待てない
冷たくなって海にゆくまであの貝殻は
この心音を覚えていてくれるだろうか耳障りなノイズよりも
嫌われることにとっぷりと慣れきった雪がれることのなかった、ついに

こんな弱い視力でもしっかりと理解できる視通せる限界を
詰め込めるだけ詰め込んだすっかり本物はからっぽの軽い手荷物
切符売り場で狂い咲いたようにやまずわずかのコインで
大盤振る舞いしてもらった紙っきれたちは最後の

冬へとむかうための大切な切り札失くしてはならない
だからポッケは縫いつけてしまいあとは破るだけにしたけれど
ふり返ってしまうのはなぜだろう忘れたものはないはず
なにしろ持っていく鞄の友人にはからっぽを選んだのだから

ただ、願いならばなくはなかった
ねぇ神さまもう一度みたい空があったんだそれは茜音色のあの、
帰りたかった六歳のあの、
雁行の美しいあの、