ピーコ
島中 充

                 
ぼくは大切に飼っていたのである
泥川からザリガニを取ってきて 喰わせた
嘴の一突きで赤い頭を割り ピーコは喰った

切り株のうえに 
おとうさんは羽を押さえ ピーコをおさえ
なたの一撃で首を落とした
タッタッター 首のないそれは二メートルほど駆けた
「くぇー 」 おとうさんは尻もちを着き 鶏の声でさけんだ
小さいとさかを掴み ぼくはごみ箱にすてた
首だけのピーコは薄目を開け 僕をみていた 
いつもの目で

すき焼きは美味しかった
ぼくの誕生日のご馳走であった
「お腹の中から透き通るような白い卵が出てきたわ きっと明日生む分よ」
肉を摘まみながら お母さんが言った

おとうさんとおかあさんは首を伸ばし 頭をくっ付け話していた
「できたらしいわ」
ぼくは鶏のように首を捻って聞いていた
赤いとさかのあるものを身籠ったのだ


自由詩 ピーコ Copyright 島中 充 2014-09-26 22:44:24
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