廃船
Lucy

背中から滲み出ていった
粘性をなくしさらさらたあいなく
細胞膜を圧し拡げ
やがて満ちてくる
潮の匂いを
含む泥水

糸は震えず
笛は鳴かない
風が吹くたび
飛ぶ 砂の荒らさ
腰から下を締め付ける水圧

9月は鉛の混じる鈍さで
緩やかにうねる
しけの予感

あの日
沖へと押し出した力
洗い 持ち上げ
たたき落とした

瞼越しに今も招く

雲間に光が一条こぼれると
乾いた砂に足を引き摺り
おかへ向かう
湿った磯風を吸い過ぎた体が
軋んでも










自由詩 廃船 Copyright Lucy 2014-09-25 15:00:22
notebook Home 戻る