火柱
ただのみきや

目と口は似た者同士
じっとして居られないいけない子たち
耳と鼻は抗うことのない姉妹
めしいおしの穴凹ふたつ
手探りすれば硝子より
始末に悪い情緒の破片
記憶に纏ろう幻肢痛ファントムペイン
脳は器用に立ち回る頭骨の中だけで
僕にはもう理性は王様じゃない
歩くのを止めたとき心臓も止まるだろう
あられもないことばが水面みなもに降り立って
からだは震えて堪え切れず
射精される精神何度も何度でも
妄想だけが渇きを癒す薬のよう
日常を蝕む月の満ち欠けだ
誰かが壁に殴り描いたペンキの文字が
一切語らない記号と成り果てるように
真実は群衆が紡いだ巣の上で無精卵となる
言葉を費やして血抜きされ
簡素な概念へと収束されて往く
まだ生温かいトルソーたち
理想の棘が胸に刺さったまま
もがき掻きむしる手足もなく
枯木となっておしとなって
ああ稲妻よ引き裂いて
火柱として帰らせて



          《火柱:2014年9月23日》







自由詩 火柱 Copyright ただのみきや 2014-09-24 17:03:54
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