小さな祈り
ヒヤシンス


芝刈りの最中、可憐に咲いている名も知らぬ花を私は見た。
同僚に聞いても知らぬと言う。
私はその花がどうしようもなく気になったので、
皆の見ていぬうちにこっそりと花を抜き、作業着のポケットに詰め込んだ。

一日の作業も終わり、家路に着くなり、作業着のポケットをまさぐると、
花は萎れ、花びらは半分ちぎれていた。
私はなにか悪いことをした気分になった。
綺麗なまま刈られていた方が良かったのではないか、と。

いずれにせよ、私は今日一輪の花を殺した。
ほんの少し前まで生き生きと太陽を浴びて咲き誇っていたものを殺した。
私の胸は息が出来ない程、激しく疼いた。

私の弱々しい手の中で微かな匂いを残しながら横たわっている花。
机上の一輪挿しに萎れたその花を挿してみた。
せめて新しい蕾をつけて私の心をなだめてくれるように私は祈った。


自由詩 小さな祈り Copyright ヒヤシンス 2014-09-24 00:34:05
notebook Home 戻る