果て
芦沢 恵




ただ 遠い出口の丸い光が見えていたから


「それでは また」

ポツリ一言 質量を伴わない声では背の側に当たったことに気づかない

ひたすら光の穴に向かって空回りの歩みをすすめていたが

「それでは また」


声は独り言のように繰り返されて


背に気持ち悪く押圧する抵抗に変わる


「またね ですから またね」


足早に ただ足早に遠のく


口にすべきでない言葉嘔吐


隙をついた質量のない分銅が先回りをして光明を絶った


長きは背の側に揺らめいていた


気づかなかった遠いワンデイ


フーリッシュ・ハート


自由詩 果て Copyright 芦沢 恵 2014-09-22 22:44:24
notebook Home 戻る