千年杉の猫月夜-9/20
りゅうのあくび

長雨が降りしきる
深い森と濃い霧に
おおわれる
絶海の孤島に
もう遠い昔
誰も知らない
猫たちと
鳥たちが住まう
千年杉がありました

樹齢千年を超えて
鳥たちがさえずる
杉の巨木にある
朽ち果てた大きな空洞は
こっそりと隠れた
猫たちの集落に
なっていました

人間たちは戦争を
繰り返していて
探検家も秘境に
たどり着くことができずに
ほとんどの自然が
残っていた時代

遠洋航海の果てに
遭難した水夫たちは
島に上陸したばかりでした
月夜が琥珀色に耀く
千年杉の集落では
見張りは黒猫たちに
任せきっていて
あとの猫たちは
別に気にも留めず
欠伸をしていました

ふと釣りをする
水夫が鮭を焼く
煙の匂いが流れてきて
砂浜の方角から
橙色をした灯火が見える
歌声が聴こえて
黒猫の伝令で
猫たちは一斉に
海辺に向かっていきました

弧を描く
月明かりは
夜霧に包まれて
千年杉の集落を
臨むように
照らしながら
猫たちの帰還を
静かに待ち続けていました


自由詩 千年杉の猫月夜-9/20 Copyright りゅうのあくび 2014-09-20 05:51:30
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