あんみつ
……とある蛙

何年ぶりだろう
二人で食べる黒蜜のあんみつ

手術前のある日の病室

老舗の和菓子屋の前を通り
ふと気づいて買った
お土産のあんみつ

あんみつの中には
紅白の求肥や赤豌豆
漉し餡を一練り
お約束の缶詰の蜜柑

賽の目の寒天には
黒蜜か白蜜か
君は黒蜜を選び
嬉しそうにかけ回す

二人は黙々と食べる
黙々と食べる。
時折
「美味しい」と
嬉しそうに言う君を眺めながら
僕も一緒に食べながら
とても美味しいと言う

とても幸せな時間を
スプーンで掬って食べる。

そして
時間が淡々と過ぎてゆく
小さな幸せな時間の残りが

※船橋屋です。


自由詩 あんみつ Copyright ……とある蛙 2014-09-08 16:56:08
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