Sylph
生田 稔

 Sylph

ある男、夢をみた
さかぼそけき小女の夢なり
それより、その夢忘れえず
来る日もその次の日も
毎日かんがえにけり
つに決心せり

我このsylphなるもの
見つけるため、旅に出でむ
Sylphとはギリシャの神話にありし
妖精のことなるゆえ
やむなくsylph名づけし

おとこ思案して、はてさて
どうすれば良き
さては、女の好む時計集めむ
方々にでかけては
しこたま集めけり

かくして、訪ね訪ねて
旅かさね
千マイル、二千マイル
さてどれほど、さがし歩きたか
けれども、そごとき少女には会わず

時計数千個を売り、数千の女に会えり
もうこの如きことやめむ
北の国のみすぼらしき宿に
一夜眠りけむ
夜中ドアをたたく音せむ

さてはと出でてみれば
素肌の身のSylph,さっと
逃げて行きけり

さなり、きっとあれはSylphにてあり
それより、 男、ついにSylphに会う旅止めけむ
人の世を悟りて
数千の時計売りし金にて、生涯安楽に暮しけりとさ。  



自由詩 Sylph Copyright 生田 稔 2014-09-07 17:25:46
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