純粋群衆批判
HAL

老いぼれは戦っていた
不善なる狡猾なるものと

周りは
祈っていた
でもただ視ているだけだった


老いぼれは戦っていた
媚び諂い己のみを守ろうとするものと

周りは
応援していた
でもただ視ているだけだった

老いぼれは戦っていた
言葉を凶器に弱き者を迫害したものと

周りは
頑張れと叫んでいた
でもただ視ているだけだった

老いぼれは息が上がっていた
脚が動かないと感じはじめた
相手のルール違反のパンチが
腹の下をねらって打ってきた
意識が一瞬遠のこうとしてた

周りは
倒れるなと叫んだ
でもただ視ているだけだった

何もせずただ見ているだけだった
他人事の様にただ見ているだけだった
仲間の二人がすでに心を殺され消されたのに
弱かったんだ仕方ないとただ見ているだけだったお

老いぼれはやっと気づいた
彼等は仲間ではなくただの群衆だということに
群衆は自分に火の粉がかからなければ
好いんだと想い何もしない者であることに

そして老いぼれはリングから下りた
ここの仲間意識は上っ面だということに絶望を抱えて
平穏を望むだけで何も為さない者たちに落胆すら憶えて


自由詩 純粋群衆批判 Copyright HAL 2014-09-06 10:27:18
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