三日月
ゆきむし

三日月みたいな瞼のカーブが好きだ
わたしの唯一の取り柄のきれいな奥二重のカーブ
細まったり大きく開いたり
わたしの瞼にはお月様が宿っている

ある朝目覚めて鏡の前に立ったら
ピンと張った輪郭は緩んで
そこにはっきりと二本線
わたし、二重瞼になってしまった

それは世界の終わりみたいだった
花と花のくちづけ、空の呼吸するさま、雨空の震える姿
わたしと世界の秘密は破られて
全部見えなくなってしまう

翌朝もそのまた翌朝も
三日月の輪郭はぼやけて
残念な二重線がわたしを絶望させた

三日月みたいな瞼のカーブが好きだ
なだらかな弧を描くカーブ
私の瞼はいつもお月様を抱いていた


自由詩 三日月 Copyright ゆきむし 2014-09-04 17:08:33
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