カスピ海ヨーグルト
ことこ

ブローニーフィルムみたいに大切に試してみては破くコンドーム


ことごとく逆らいきれずに動物の骨だったという楽器にさわる


叫ぼうとしても脊髄反射だしなにかを失うわけではないよ


離島から明日帰りますという手紙 よごれた体をすりよせる猫


石鹸ですべてきれいな夏だった フィギュアスケートを流し撮りしてた


月極の駐車場から溢れだすうすまることのない海をみる


蝙蝠(こうもり)の心音でした セーターのほころびみたいにせいかくな咳


目薬を人肌くらいにあたためて気球に隠れたわたしを飛ばす


花束をよやくするため並んでる券売機から出ている煙


(戸棚から二酸化ケイ素の声域で)息継ぐ間もなく即答してた


なんかもう森林のおくでふたりだけ水分だけで生きていきたい


踏み台にしたパンジーの標本をやさしくいたわる浴室のなか


おさえこむことでつぶれた苺からカスピ海ヨーグルトができてく


ふたりとも恐れていても新聞の届いたおとで朝になってる


短歌 カスピ海ヨーグルト Copyright ことこ 2014-09-01 21:47:18
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