ジカイダー
ただのみきや

ぼんやり開いた窓から
生活の群体が 声とも
匂いともつかない無数の触手を忍び込ませ
夕べを小さく折りたたんで往く
界隈のステテコ爺のように
この胸を徘徊する諦めの ブラシのような足音
持ち出す荷物は何もない
脱出用パラシュートも
遅れもハイジャックもありはしない
時という乗り物の確実性


安楽と為体ていたらくの無垢な抜け目のなさ
フワフワした夢想のわだかまりを
ペン先で紡ぐかき混ぜる
ただの空気と夕日に酔っぱらう
壊れたテレビのチャンネルをガチャガチャ回すように
卑しく妖しく
あやして癒して
知らず学ばず闇雲に走り
愛憎の蜘蛛に抱かれて雁字搦がんじがらめだった日々
ユメモドキ茸でアタリ煌いて


だが醒めてしまえば
竹竿の先でなびくぼろ布のよう
劣化して往く自己像に
自我蜂のひと刺し 
産みつけられた永劫の疑問符は
内から食むものを目覚めさせる


そうして不細工なモザイクが脳裏を埋めて往き
オセロよりも単純なルールが支配する
泥舟の船頭は沈むのみ
明日など欲せず沈むのみ
ああ未来は未完のまま
老いた子供となればいい
日曜日が溶けて行った
ソフトクリームを落とした夏の
涙も枯れてもはや嘘泣きだった秋の
導火線は途切れることなく
現在いまへと繋ながるへその緒だった
おれは奇形のピストルになる
冷たく暴発して



      《ジカイダー:2014年8月24日》






自由詩 ジカイダー Copyright ただのみきや 2014-08-31 14:41:08
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