Eyeと詩の間(はざま)で
ハァモニィベル

睫毛に言った
「もう眠ったのかい?」
「いいえ」
答えた口唇は
一瞬も動かず
間を置いてから
「死んでいるの」
そう語っていた


もう何処にも生きている窓はなく
道も もう 死に絶えている


《アンニュイに忍び込む残酷》は、 
ヒンヤリとした平然さで
目の前の花を鼻に変え
朽ち果てた匂いを漂わせ・・・立ち籠める

塞いだ鼻の――耳の奥で
見えない花の―音が触れあう

音なし草は、
死のひそむ繁みに
いつだって
咽ぶように揺れていた


音無葬の鼻模様


そのまま佇めば 佇むほど
冷たく時は 満開に枯れてゆく


音無葬の鼻模様


あのときも  そのときも  ・・・そして、
あのときから  ずっと  このときまで。


でも、


振り返れば きみとぼくは、
ぼくらは、この場所で、

たった二つの命だった・・・

づっと・・・


    ――二人で遠くまで散歩したね
      林を抜けようと、ぼくが選んだ道を
      ところが 歩いてみたら まるでどろどろの道だった
      泥の中へ踏み込むたびに、きみは、
         「へっちゃらよ」 とか、
      自分の台無しになった靴まで笑って
         「大丈夫よ気にしないで、ほら、草で拭けるわ」
      なんて、ぼくに文句も言わずに


それが君だった。


《その》


美しい口唇を
今ぼくは、見ている
あの頃のぼくが、
あの頃のきみの口唇を


もうじっと動かない口唇を――。


《その》


一瞬の、

一瞬の空想の果てに

死に絶えた窓は皆
蘇った生の響きに蹴破られ

彼女を包んでいたぼくの瞳に
かけがえのない一瞬が満ちて零れた

ぼくの睫毛がそっとやさしく聞いた
「もう眠ったのかい」
「うううん
 ・・・・・・・
 ・・・愛してるわ」
「ああ、僕もさ。づっとね」











自由詩 Eyeと詩の間(はざま)で Copyright ハァモニィベル 2014-08-26 14:33:59
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