雨の表紙
木立 悟





曇の裏側 霧の糸
半分の眠り 半分の過去
器からあふれる
布地の光


闇を描き足す指の痛み
静かに眩む暮れのまばたき
ふいに近づき 消える影
遠のくことさえ知らぬ影


小さな不和に花があふれ
坂を下り
石の村に着き
石を流す


水は水を塗りつづけ
色も光も聴こえなくなり
そのままそこにとどまりつづけ
水に水に塗り変えてゆく


蒼に灰にひらめく窓
ふいに顔を照らす赤
昏く高く のぞきこむ空
常に常に 壁のそばの径


小川の音も
内海の音も消え
水たまりから水たまりへゆく尾と羽の音
ただ尾と羽の音ばかり


昼と夜の
一ッ眼の入口
影の奥の影
静かに街を見据える影


墓石と同じ色をした山羊が
じっと空を見つめて動かない
最初の滴が土に着く前に
雨のトリプティークを閉じてゆく





















自由詩 雨の表紙 Copyright 木立 悟 2014-08-25 09:53:41
notebook Home 戻る