17歳だった
サトウチカ

『毎秒多くの人が死んでいます』
遠い国に生まれて消えて行く悲壮な顔の少年たち
映すコマーシャルに胸を痛めながら無意識のうちに嫌いなニンジンを除ける、捨てる
家庭用の生ごみ処理機に入れてスイッチを押せばものの数十秒で肥料になる
エコだ
この肥料で家庭菜園のブロッコリーはすくすくと育つ
やがてわたしの口の中へと還っていくよ
エコだね

授業中、薄い真白い紙で指を切ってしまった
血が薄っすらとにじむだけの小さな傷
なのに刺すような熱を持つ痛みを感じるのはなぜだろう
人が人を傷つけることの意味って何?
二次方程式のあれこれや使う機会のない英文法なんて知りたくない
教科書に乗ってないことを勉強したい
ふりをして何もしなかった
あたしの知りたいこと、ちゃんと勉強していればさ
知ることは出来なくとも考えることは出来たんだって
ふりをしていた

時々拗ねることに疲れると
誰もいない保健室で仮病のあたしは一人寝転がったりした
シーナリンゴならあたしの言いたいことを分かってくれる気がして、17を聴く
もっと寄り添って欲しくてイヤフォンを耳の奥へ強く押し込んだ
ただ子どもでいたいだけだったの

塞ぎ込むことばかり上手くなって
一体何を恐れているのだろう
体だけ成長しても今のあたしは何も変わりはしないよ
17歳も20歳も30歳も一緒だ
どうして人は年を取ることを特別なことだと信じるの
どうしてそのつど新しいスタートを切りたがるの
17歳のあたしにはわからない
きっと誰にもわからない
むきだしの自意識で傷つけた自分を慰めるのが好き
知ったようなことを言って見透かしたふりをするのが好き
あたしは正しい、間違ってる、正しい、間違ってる
もうぼんやりとしか思い出せないテレビの向こう
消えて行った異国の少年に問いかける
あたし間違ってる?
一人じゃ何も出来なくて、哲学することだけが立派だと信じている
全てから目を逸らすあたしは不健全ですか

だからいつも願ってるよ
たった一人の
たった一人でいてくれる神様に会いに行きたい
強くなれるよって頭を撫でて
変わらないよって抱きしめて
あたしだけを愛してほしい
必要なんだ
必要なんだよ
強い言葉沁み入る言葉溶かすほどの言葉


あたしはいつか私になるから


すべて受け入れることが大人になることだと思い込んでいた
一人で向き合うのは怖かった
17歳だった


自由詩 17歳だった Copyright サトウチカ 2014-08-17 21:03:23
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