明朝
たもつ



今朝、あつ子は眼鏡だった
俺はあつ子をかけて新聞を読んだ
悲しい記事をであつ子は泣き
楽しい記事をであつ子は笑う
俺のあつ子、眼鏡は泣きも笑いもしないのだよ
そう言うとあつ子は黙って
ただの眼鏡のような音をたてる

昼、時報のあつ子が十二時を告げた
俺はやはり箸がうまく使えない
掴めないものばかりだ
いつかは皆、口に入るのだから
食器棚であつ子が笑う
唇を開くと
あつ子が俺の言葉になる
俺のあつ子、一緒に歌おう
馬鹿みたいに沢山の歌を

夕方、あつ子は暮れていく太陽
正確には光の粒子だった
時間が物質の劣化する過程であるならば
明日の朝、俺はまた何かを失っている
あつ子、何故おまえは俺を貫かないのだ
こんなにも長い影をひとつ作って





自由詩 明朝 Copyright たもつ 2005-01-25 16:38:45
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