おぼん ’86
狸亭

お墓参りに行くから早起きしよう
しかも
いつものように バスと電車とまたバス
ということでなく
自転車で行ってみよう。

そのとおり
めずらしくみな早起きした
長男 長女 二男 三男
それでも予定より一時間ほど遅れて
夫婦と子供たち総勢六台
出発。

ちょうど一時間きっかりで
到着。
広い多磨墓地の片隅にある小さな墓には
父と母と弟と 三人が眠っている。

ほんとうに久しぶりです
一家揃ってやって来ました。

やあ だいぶ草茫茫だなあ。
なんだ 鎌一丁じゃしょうがないなあ。
ずるいぞ何もしないで。
手でむしればいいだろう。

おじいさん おばあさん
皆でやって来ましたよ
今度はぼくの番ですが
まだまだ 待ってください。

小さな花束と ひとにぎりのお米と
たくさんの線香の煙の煙の中で
床屋に行きたてのようにさっぱりして
墓石もすっきり きれいに見える。

ほら おじいさんも おばあさんも
あんなによろこんでいるよ。



自由詩 おぼん ’86 Copyright 狸亭 2003-11-05 07:04:06
notebook Home 戻る