種を蒔く人へ
為平 澪

種を蒔く人よ
太陽が目覚める前から 満月が挨拶するまで
私を耕してきた人よ

私は情けない文字でした
いつも 対角線から汚いコトバで罵り
そして 平行線に並べられた
多種たちのコトバに 一喜一憂して喚きました

種を蒔く人よ
あなたは畑に出て様子を見ては
私がひび割れて 荒んでいると 涙を汲んできて
私が光が欲しいとわがままを言うと
黙って微笑んでくれました

種を蒔く人よ
私は今夜アスファルイトの痛みに耐えて
違う土地にうずくまり 発芽する
明日には 見知らぬ私の花が 芽吹くでしょう

 (それはとても怖いこと それはとても恐いこと
 (千年の闇を たった一条の光によって消される程 こわいこと

種を蒔く人よ
私が咲かせる私の花の名を 
あなたにだけは知らせましょう
そこには 長い物語
そこには びっしり詰まった花の種

膨らんだ手 曲がった腰 見えない視力
日々があなたを奪い去って逝くのだと
知っていても尚、這いつくばって、這いつくばって
這いつくばって、でも、・・・ 生 き て

あなたが植えた花なのです
私の側に立っている
名もない木も、また・・・

木を植えたのも
きっと いつかのあなたの仕業

花を見ては 私をあなたの名で 呼んでください

種を蒔く人よ 心を耕し続ける人よ・・・


自由詩 種を蒔く人へ Copyright 為平 澪 2014-07-25 16:11:20
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