人へ
葉leaf

〈私と社会〉
社会は初め私をくるむ甘い衣のようだった。
私が一人で歩きだすと、
社会は今度は数限りない迷路と罠をしかけてきた。
私が地図を作り罠の避け方を学ぶと、
社会は今度は遠くに見える山頂のように聳え立った。
私が山を登り始めると、
木々は囁きかけ花々は笑い社会はもはや私の体と区別がつかぬ

〈仕事人間〉
日本の社会と経済を支えているのは我々一人一人の名もなき労働者。
日本から更に身近にすぼまって行く輪の中で、
会社、家族、そして自分の存在は自分が作り出している。
過去は捨てろ、現在と未来がたくさんの美味な責任を課してくる。
責任を華麗に燃やし尽くすんだ、成功という名のもとに。

〈3か月目の憂鬱〉
そろそろ地獄廻りも一周したなあ。
天国廻りも兼ねた豪華なツアーだった。
一区切りついたことだし一度地上に戻ろうか。
でも知っている、地上は天国でも地獄でもないただの退屈な場所。
僕の全身に刺青された責任は、
案内役として天国と地獄の上階へと僕を引き上げ一層の苦楽を約束する

〈日曜日の憂鬱〉
気がついたら体が顕微鏡になっていて、
地面に撒かれた極小の海が大写しにされた。
海は僕を勝手に攫って行って、
溺れているうちに気がついたら僕の体は望遠鏡になっていた。
宇宙をめぐっている密林が大写しになると、
今度は僕は密林に紛れ込み、
存在しない出口を探し回る。
そんな日曜日


自由詩 人へ Copyright 葉leaf 2014-07-17 07:03:58
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