反愛
ただのみきや
薄闇の中に残された
一つの林檎から
向かい合い互いの髪を切った
鋏で剃刀で鑿で鋸で
欲深く嗜好を相手に負わせ続けた
二体の異形は言葉を上擦らす
「わたしたちは互いに生かしも殺しもしない
迷信程度――そんな薬草でしかなかった 」
高台から自分を捜し続けた
いのちの縫い目が解れたかのように
黒い煙が立ち昇る
犯された肖像 あるいは イコンから
ソドムとゴモラはふたつの歯車のように
噛み合わず 声なき生き物が鳴くように
囁きを孕む そして
こと切れて風に流す
灰の海が溢れだす
一つの林檎から
《反愛:2014年7月12日》