ソリテュード
ヒヤシンス


夜毎訪れるセピア色の光景にふと吐息を漏らす。
奪われてゆく時間の中では全ての音色が透明だ。
物語は夢と現の境を行き来して
真夜中の扉をけたたましくノックする。

頭の中から幾つもの瞳が外を見ようとする。
心では感じているのに。
かつて旅人だった一人の男は
いまや平原に立つ一本の木に過ぎない。

無駄に流した涙は朱く染まり、
古ぼけたキャンバスに描かれた
海を眺める老人の瞳に遠く映る。

全てはセピアに染まった世界の話。
真夜中の老人は永遠に佇む自身の記憶。
吐息はため息となり、ほとんど白く病む。


自由詩 ソリテュード Copyright ヒヤシンス 2014-07-12 00:18:38
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