絶対量
オダ カズヒコ




ただ唸り続けるケダモノには
地球の匂いが十分に染み込んでいる

生まれた瞬間に浴びた呪文のせいで
魔法がとけない

言葉がくたばるくらいの
鮮明な魂
98階のマンションから突き出した
むき出しのナイフ
動脈のように
原因のわからない血

昆虫になって
泣くことさえできたけれど
羽は世界を受け破れそうになり
森に埋もれて風を見つめた

雨が降っていた
遠くで街がクラクションと音楽で溢れている

でもそれが何なのかわからない
ぼくらは変えることのできない未来を生きている
赤い血の流れる
真っ白なリンゴだ
虚無と虚構に辿りついた都市に
唇を寄せてつぶやく

昆虫になって
泣くことさえできたのに


自由詩 絶対量 Copyright オダ カズヒコ 2014-07-10 22:32:44
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