ノート(物悲しいかたまりが)
木立 悟






物悲しいかたまりが
からだの奥をふくらませている




水がどこまでも
水であるのは悲しい

言葉の色が
明るく消えてゆくのは悲しい

むらさきだけが
むらさきでいるのは悲しい

口のなかにいつも
糸があるのは悲しい

左目はまぶしく 右目は暗く
どちらも何も見えないのは悲しい

わたしが
わたしでしかないのは悲しい

受けとめきれない言葉がこぼれ
次々と次々と消えてゆくのは悲しい

名も無きものに名を与えようとすることに
悲しみをおぼえないことは悲しい




物悲しいかたまりが
ふくらみふくらみ からだを破り
言葉をつかさどる部分を連れて
星を出ていきかけている風のにおい




























自由詩 ノート(物悲しいかたまりが) Copyright 木立 悟 2014-07-04 02:35:47
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