六月の埋葬
もっぷ

インク花の囁きのさやかなるここは
六月の雨の庭
アジサイの清楚に花盗人の恋をする
いのちの謳歌の聴こえる
ほら、あちらではカエルも
カタツムリもそれぞれに
恋をしている

乙女もわざと傘を忘れ
濡れそぼるを選びながら時計を
気にしている
一本の傘を持った愛しい人が現われ
連れ去ってくれる真昼の夢を見ながら

いまこそ繁盛する傘屋の歓び
さて、稼ぎ時と
戸を開けて雨の止まないことを祈って終わらない刹那の信心

カフェのテラス席が閑古鳥で
空を恨めしげに見やっている
恋と恋未満と来たる海での浮き輪をねだる子らに
立ち去られて

都合よくスケッチされる雨の季節の真実は
かなしみ
終焉を待たれる残酷の渦中
背後にはカレンダーの夏が
ビーチパラソルの花を咲かせて
迫っている

乙女も一つの傘を携える彼の人と約束の五分後に巡り会い
もっとちいさないのちたちもそれぞれに恋を成就させ
思惑という思惑が実りつくしたころに
六月は埋葬される



自由詩 六月の埋葬 Copyright もっぷ 2014-06-27 03:39:34
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