水辺 さまよい
木立 悟





歪んだ音符のかたちの窓に
陽も浪も午後も打ち寄せる
果物の恐竜が
燃え上がる


坂を下りる人
灰色の人
宴には決して
近づかない人


楽器を出入りしていたけだものが
土ぼこりのなか
現われなくなり
河口は薄く 銅のように薄く


鈴に縁取られた暗がりが
暮れの曇を昇りゆく
帆船の群れが両岸を覆い
街を風に染めてゆく


雨が一瞬の森に立ちはだかり
光を塗り 剥がし 消えてゆく
風は降り 葉の舟をつくり
目覚めない子を乗せてゆく


果物の煙が岸に残り
曇のなかの月をなぞる
帆船が再び街を去る頃
葉の舟は海に辿り着く


河口へ曇が流れ かたまり
銀はさらに銀になる
鈴は降り 鳴るものと
鳴らぬものとに分かれ
さざめきをさざめき繰り返す


灰と緑の音色が
一日の終わりと出港を告げる
新たな果物が積まれ 燃され
海へ至る坂は眠り
さまようものは
今もさまよいつづけている























自由詩 水辺 さまよい Copyright 木立 悟 2014-06-25 16:02:49
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