「先生 お弁当わすれました。」
蒼木りん

土曜日も学校があった頃の話

お弁当だった

わたしはよくお弁当を忘れた

作ってもらえなかったのではなく

わたしが忘れて学校に行くのだ

姉はちゃんと持っていく

姉はおかずも作るからまちがいない

わたしは学校に着てからお弁当を忘れたのに気がつく

家から学校まで3Kmあるので

当時は

免許もなく

歩いて会社に行く母が届けてくれるはずもない

お昼になって先生に言うと

男のその先生は呆れ顔で100円をわたしに渡す

いま思えば

その100円を先生に返した記憶がない

お弁当を忘れるのは

わたし一人だけでではなかったが

他の子は

先生にもらった100円を握り締め

楽しそうに校外のお店屋さんに買いに行く

ジャムとマーガリンをぬってもらった食パンを

わたしは情けなさで楽しくなんかなれない

ひとりとぼとぼ

パンを買いに校庭を歩く悲しさ

みんなに見られていると思う恥ずかしさ

二度とお弁当を忘れないと誓うが

次の週も忘れてしまう

先生に言いたくないので

「お腹が痛いから食べない」

聞かれたら

そう言おうと考えて机に顔を伏せる

でも

先生にもみんなにも忘れたことがバレていて

けっきょく

また買いに行くことになる

とぼとぼ

とぼとぼ..


お昼は

校庭も街も静かだ


トンボになりてー

と思った





未詩・独白 「先生 お弁当わすれました。」 Copyright 蒼木りん 2005-01-23 00:11:12
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