核心
ヒヤシンス


 鮮やかな夕映えの中に立つと もう
 私は死を思い出すことが出来ない。
 いま目の前で繰り広げられている現象が強すぎて
 私の中に在る記憶という記憶は閉ざされる。

 沈黙の中で人が己の内面と向き合うには
 それはもはや記憶の扉を開けなければ成し得ない。
 しかしそれが比較であっては物足りない。
 認識を超えた永遠の中に見出すことが出来たなら。

 一つの果実は死を超越し
 巡る季節の中で永遠の時を漂い
 彷徨いながら熟してゆくだろう。

 それならばたとえ夕映えの中に立ち尽くし
 あらゆる現象が沈黙したとあっても
 私は私の死を思い出すことが出来るはずなのだ。


自由詩 核心 Copyright ヒヤシンス 2014-06-07 10:50:52
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