花鋏
フユナ

花ばさみ取ってけねが と
庭からあなたの声がする
走り寄って
手術用具のようなそれを渡すと
あなたは百合やひなげしを
少し摘み取ってくるのだった


花ばさみ取ってクダサイ と
庭からあなたの声がする
投げる訳にもいかず
玄関の床に置くと
あなたは腰をかがめて
ばらの花へと向かっていった


あなたは何を摘み取って
私に何を渡したろう
私は何かを摘み取って
あなたに何かを渡したろうか
ひどく似通った
この血と性以外の何かを


花ばさみ取ってけねが

庭から声がする
私たちの家を囲む
一面の青い刺花
いつからか持っていた
手術用具のようなそれを手渡すと
あなたは ちょきんと
それを切り取り
私に差し出した
これを使うのは
私なのだと









自由詩 花鋏 Copyright フユナ 2014-06-01 14:17:43
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