紫陽花
山部 佳

梅雨の晴れ間に、ひときわ
紫陽花は朝陽に輝いていた、その朝

報せの電話が真夜中に鳴った
冷静と言えば、聞こえはよいが
私の応対は驚くほど事務的であった
どこかに、安堵が潜んでいた

苦しむ母を見るのは嫌だった
なんでも自分でしようとする
他の人間の助けを求めない
可愛げのない母でいて欲しかった

「自慢の息子」
看取った妹が告げた母の言葉
斎場の便所に隠れ、独り泣いた
「紙あるし、ちょうどええな…」
独り言が、母の声と重なった

あなたの息子である
可愛げのない男が
ひっそりと咲く、紫陽花を
今年も眺めています


自由詩 紫陽花 Copyright 山部 佳 2014-05-22 23:04:00
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