【邂逅】
ハァモニィベル


ぼくの化石が、笑いながら尋ねる
もう春ですか、と
やさしい物音が辺りに満ちてきたから、と
そう尋ねた時、湖水で何かが跳ねた


漆黒の深い闇の底へ、光はすべて埋葬され、
1つの箱だけがいまここに掘り出された
きっと、中に深い絶望の入った、1つの深い箱が
風も遠くで声を秘そめる


ぼくの化石が微笑んで答える
パラケルススの箱ですよ、と
風は遠くで声を秘そめつづける


開け方が解らず蓋に刻まれた線文字をなぞった、その時、
文字が光り、箱は無線LANに接続されて、突然蓋が開いた
ノクターンを奏でる箱の中の号泣を聞いて、僕の化石は初めて泣いた。




自由詩 【邂逅】 Copyright ハァモニィベル 2014-05-16 01:56:13
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