Heart of the Garden
塔野夏子
あちこちの葉陰に
星たちがひそんでいたかもしれなかった
小さな噴水は
古い歌のリフレインを奏でていたかもしれなかった
白い日時計は
誰も知らない刻限を指していたかもしれなかった
アーチに絡んでいたのは
そのときまで忘れていた夢かもしれなかった
はじらいと
ためらいとに
たゆたいながらの
口づけ
そっと吹いた風は
ほのかに薔薇色を帯びたかもしれなかった
いく筋もの小径は
庭の外へとつながることを忘れたかもしれなかった
やがて遠くから聞こえた鐘の音には
透きとおったものがなしさがひそんでいたかもしれなかった