君に与えられた色
夏美かをる

君はクラスの中でただ一人
輝く褐色の肌を纏った男の子

幼児部の時は
「お母さんに会いたい」とよく泣いていた

お母さんはさぞかし優しい人なのだろうか?
遠足の日 君のお弁当は
ポテトチップス一袋だったけど…

二年生になった君はもう泣かなくなった代わりに
クラスメートに手を出して
度々校長室に呼ばれるようになった

教室では先生から一番遠い隅が君の指定席
そこで寝ているか、宇宙人の絵を描いている
「今ここを読んでいるんだよ」
君の落とした鉛筆や消しゴムやノートを拾う度に
教科書をそっと指差す
だけど君の大きな瞳が文字を追いかけることはない

―黒人が多く住む地域の学区と統合されることになったら
 皆こぞって自分の子を私立校に転校させた―
百年前の話じゃない
夫が子供の頃の話だ

マイノリティが多く住む地域を通る時
彼は決まって言う
「ここは治安が悪い」
そして、
「これは差別じゃなくて事実だ」と付け足す
私が何かを言う前に

アフリカ系の大統領が選ばれたって
そんな大人達と、彼らに育てられている子供達が
君の周りには沢山いる

「ねえ、学校は楽しい?」
一人で廊下を歩いていた君に 
思わず声を掛けると
君は無言でいきなり壁を三回パンチした後
逃げるように走り去った
 
一体何をやっつけたかったのだろう?
パーカーのフードを深く被った君の
あまりにも華奢な後ろ姿が
淡い五月の霞に溶けていった


自由詩 君に与えられた色 Copyright 夏美かをる 2014-05-09 11:43:25縦
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