【滅亡へのソネット】〔ソネット〕
ハァモニィベル

腐り果てた空に、虹が突き刺さって風化したまま、
あらゆる感覚が停止した世界の壁に、ベンガラで擦られた、
巨大な死者の伝言が、僅かに一行、掠れもせず遺されていた。
――「背中に刻まれた言霊、犯人は言霊」と。
   *
真っ赤な人生をジワジワと吐出しては、
箱詰めにする〈ファクトリー〉。マコトしやかな無知の
言霊を食い込ませ、迫り来る幻想の激痛を胸に浴びたもの達が、
他者の焦燥を背負って戦い、自己の憂鬱を勝ち取るべく出荷され続ける。
   *
昨日見たあの明日は、今日もまた明日だった。
いったい、明日はやって来るのか。
また、今日も、昨日の明日が、
こうして石碑に刻み込まれ、埋葬されてゆくのだ。
   *
限りなく明日が、手の届かない、己が背骨の石碑に、貝殻骨に、
甲骨文字の墓碑銘を苦く無惨に刻んで――。





自由詩 【滅亡へのソネット】〔ソネット〕 Copyright ハァモニィベル 2014-05-07 01:08:09
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