背の高い老人
草野春心



  さっき、背の高い老人が窓の外を横切っていったのだが
  まもなく 横断歩道のあたりで 見えなくなった
  花粉の多い 春の 晴れた日
  喫茶店には いやみな観葉植物が 所狭しと並べられ
  意地の悪い女のように けちな匂いをはっしている
  こんなところで わたしたちは なにをしているのだろう
  見る見るうちに冷めていく 馬鹿高いコーヒーを有難そうに啜り
  テーブルの上に いつまでも置かれている
  一振りのナイフに 気づかないふりをしながら




自由詩 背の高い老人 Copyright 草野春心 2014-04-26 21:02:35
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