游月 昭




貴女にだけ焦点があたり
貴女をひきたてるためだけに
周りはほのかな額縁になって
動く絵画が私を石にする




机の隙間は敵地の運河
岸の高台には王女の横顔
幾多の砲台を横目に
辺りの模様になってすり抜ける
逆光の夕日
横顔
侵入者
直列の瞬間の
無酸素
無音に撃たれる主砲の刻み
傍で引き裂かれて飛び散る−宇宙へ
永遠にさ迷う潜水艦の中に独り
艦内に漂うかすかな残り香を游ぎ
滅する




麦畑のモアレまぶしく
モンシロチョウは夢中
瑞々しい眼に舞っている




うつむく貴女の髪は
夕風にとけて
垣間見た唇からこぼれる花の吐息に
私は
皮膚という壁を通り越した




ジグソーパズルのピースが
合わないと分かっていながら
はめ込もうと
まばたきもせず
ただ独り




太陽が強すぎて
私の姿はアリのようにちいさく
貴女に踏まれ
体液を靴の染みにして
消えよう




凶器であった筈のナイフは
草むらで人知れず錆びていく





自由詩Copyright 游月 昭 2014-04-23 00:27:17
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