文明開化の音を探す
煙と工場

とある屋台に座ると
目録には
 ラーメン
 日本酒
 ビール
そういったものの他に
 月
があって

「この月はなんですか」
と聞いたら
真っ黒などんぶりに
水を並々とそそがれて
「外に出てみるといいよ」
と言った

(なるほど風流ですな
 どんぶりに月をうつせば
 いいわけだ)

外に出てみれば
目の前には
最近建てられたと思しき
高層ビルがあって
そこから光がうっすらと
出ているだけで
月なんてありはしなかった

僕はおろおろして
振り返れば
屋台は消えていて
僕はといえば
どんぶりかかえて
阿呆な姿

狐に化かされたか
どうかは知らないが
水の表面には
「ツキのない夜もある」
という下手な文字が
ゆれていた


自由詩 文明開化の音を探す Copyright 煙と工場 2005-01-20 16:03:33
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