「かおるのおと」2014.04.19 (一五首)
もっぷ
春の野がどこまでも遠いこの病室できのうさくらが終わったと知る
この年のさくらも終わりわが病室はたとえようのなく北東を向く
春風が知らずにすぎる向きに建つこんな部屋にもひとが生きてる
誕生をいのちのことと見限るなこころと合わせてやっと在るんだ
星空を君から聴いて思い出す知ってる宙はプラネタリウム
ふるさとはあの病院のベッドですどれかと訊かれてこたえられない
今朝っから負の形容詞抱え込みネガティブ連鎖がもう止まらない
遠足の動物園の土産屋のキリンへ未練のこしてる今も
富士山のいったいどこがいいのかと訝しんではいけない国です
米国の有色の子らはどんな絵本読んで育ってゆくのだろうか
ニッポンに住むイエローが美しくホワイトに仕え生きてる社会
ヘンだから肯かないで残されてヘンではないと初嘘言った日
ちびだからみあげていてもまだ土が近かった日の菫を想う
ふるさとが産まれたベッドだけの子はただそれだけで異端なんです
いまちょうどその頃合いと聴く音はベートーベンの第五の序盤